Martintonの日々

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続:又いとこ「どうしたとや」編 Sー2

彼が生まれ育ったのは昭和二、三十年代。だからこそ存在しえたのかも分かりません純粋な正義感が、彼は冗談のようなエピソードの持ち主でした。

父親が炭鉱の賄い(まかない)をしていた関係で福岡県粕屋郡須惠町の炭鉱住宅に住んでいました。丘陵地帯に階段状に同じ形の住宅が並んでいて訪ねる度に迷う楽しみがおまけで付いて来ました。
普段、彼は決して乱暴者ではありませんし、学校の成績も常に上位、おおらかな優しさで人を包むタイプでもありました。しかし男の喧嘩をすれば何故だか無類の強さを誇っていました。友達の数は多そうでしたが、徒党を組むタイプではなく、その意味では一匹狼だったのかも知れません。

私が初めて彼の強さに触れたのは小学二年の夏休み、兄啓蔵と二人で須惠の彼の家へ一週間程泊まりがけで遊びに行った時の事です。毎日のようにザリガニ釣りをしたり、炭坑近くのボタ山のトロッコで遊んだり、昆虫採集に没頭したり、危険な沼で蛇と一緒に泳いだりでしたが、彼が一緒だと何故だか怖さ危なさを感じた事がありませんでした。彼にはそんな何かがありました。
夏休み中 近くの学校のプールは子ども達でごった返していました。彼と兄は人と人の隙間を縫って泳いでいたようですが、真夏の燦々と降り注ぐ強い光に拙い視力さえも殆ど奪われ私は、なす術もなくプールの縁に座って足をバタつかせていました。
それなりに邪魔にならないように気は遣っていたのですが!偶然私のバタバタが誰かの頭に当たってしまったのです。すると見るからに乱暴そうな大柄の上級生か中学生がプールから現れました!当然の如く奴は怒りを露わにして、ゆっくりと怯え顔の私の目の前で握り拳を作ってみせました。
「どうしよう!くらされる!(殴られるの意味)」
その時を図ったかのように彼の登場です!
「まさとし どうしたとや〜!」
私「この人の頭ば分からんで蹴ったごたあ〜っちゃん」
奴「そう この人が足で俺の頭ば蹴りんしゃったけん」
と言いつつ先程の私を威嚇していた勢いが消失していたのです握り拳と共に。
「どうしたとや」の一言で。体格差も殆どなく奴が怯む要素など全くない、むしろ顔の迫力では勝っていたのにです。
その時にぼんやり私は理解し始めました。「まさのぶちゃんはひょっとして相当強いのかも?」と。そして彼と対峙した奴も日頃の粗暴な生活体験から得た感性で感じ取ってしまったのではと。

そうです☆
以前ここで、2月20日のブログで紹介した♪彼のお爺さんと私達の祖父が兄弟と云う またいとこ関係の『まさのぶちゃん』のお話の続編と云う訳です。

その後、『顔の迫力勝ち君』は謝り損ねた私を残して、登場時とは真逆な雰囲気でその場を立ち去りました。


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2008.04.30

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