Martintonの日々

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出迎え犬、お歳末話 テツー4

ぼくが帰宅し工場の木戸の前に立ち止まる気配を彼が察知すると、木戸の内側からかすかに歓喜の雄叫びが聞こえて来ました!
家屋奥の犬小屋から、間違いなくトルネードで食堂横を通り、工場入口のアルミのドアを跳ね開け、工場を駆けて走り来る四足音とワンワンがクレッシェンドするのです!
そして木戸を開けた僕を揺らぐ二本足で出迎え、お帰り!のハグが始まります♪勿論顔中ペロペロ付きです!おかげでいつも僕の上着やシャツは彼の肉球印だらけになりました。歓喜な姿は和みでも、ハグは勘弁!でした。
で、彼のファーストインパクトを回避する為に、木戸を開けるや否や近くの物置台に飛び乗り機先を制したものです。それでも台の上の僕を見上げながら、毎度懲りずに、思いっきりテツは出迎え尻尾を振ってました。お別れの時に僕が思い出せるように ★

彼の体感記憶能力の突出ぶりは、既にキャンプ話でしましたが、もうひとつ類似した話があります♪
そのむかし?かまぼこ屋さんの超絶に忙しく徹夜続きの年の瀬が収まり、大晦日が訪れます。工場から始まる大掃除を全て終えると前日とは打って変わっての静寂が訪れます。年末に冷遇されてた彼にも、突然家中の人達が優しくなるのです。
ある年、誰かの発案に全員が「テツにもお正月を迎えさせよう」との意見にまとまり、彼にシャンプーをふりかけ身体を洗ってあげる事にしました!真冬の暴挙に戸惑い気味の彼でした。が、周りのやわらかい空気に優しさを感じたのか、時折大きな身震いで周りにシャンプーを跳ね飛ばしながらも、じっと耐えていました。そして仕上げのタオルドライで目を細め、ドライヤーで気持ち良さそうな彼の表情が印象的でした♪

かまぼこ屋さんの二階では既に『お歳末』の用意が整っていて、手の空いた人達から順に金屏風の前の大きな二つのコタツの周りに着いて行きます、部屋のテレビの紅白が、お疲れ様会の空間の引き立てて役でした。そして真打ち!テツの出番です!階段を怖がり嫌がる彼の尻を職人さん二人の四つ手で押し上げ、お歳末の席での「おすわり!」が告げられます。
いつも上からの人間が、彼と同じ目線なのに明らかに緊張が見て取れました。まるで置物犬状態。テーブルに盛られたご馳走には手?を伸ばさず、彼の顔近く箸で差し出される食べ物のみに首から上を左右に振るだけでした。長時間不思議な程おとなしいトルネードの別の顔がありました。やがて宴の終わりを促され、恐る恐るな彼が、下りの階段を下ろされて行きました。

そして元旦の朝が訪れます!僕等兄弟と両親がお雑煮を頂いていると、階段からカツカツと云う音がして来ました!
そうです!テツが怖いはずの階段を自力で登って来たのです!そして大晦日に割り当てられた席へとゆっくり座りました。家中の優しい笑いを誘いながら♪正月2日日目は階段を少し早足に駆け上がって、しかし席に着くと穏やかでした♪そして3日目ともなると、すっかり置物を卒業してリラックスモードへとシフトしてました。下りの階段をもマスターして。

そして運命の正月4日目♪
かまぼこ屋さんは仕事始めの日です。いつものように階段をクリアーした彼がすっかり馴染んだ部屋へ入ろうとした時、彼にとって〈寝耳に水〉の我が母親からの喝が飛びます。「テツ!!正月はもう終わったとよ〜!」キョトンとした彼は、部屋の入口から昨日との様子の違いを覗き込み、尻尾を丸めてすごすごと階段を降りて行きました♪

さ〜て、一年が経ち再び大晦日☆
シャンプー、タオルドライ、ドライヤーを終えた彼は、誰から促される事無く当然のごとくに階段をカツカツと登り始めました☆
お歳末の部屋を目指して♪


0721

2008.07.21

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