Martintonの日々

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唾液ハンカチ

鯉のぼりたなびくある日、夏服を揃える為学校の帰り、ランドセルを置いてすぐに、母と近所にあった我が心のランドマーク博多大丸デパートに行きました。

おじさんが終わりの合図をくれるまでの数分間、囲いのコースを乗り回せる、電池で動く超低速ミニカー。小さな楕円の輪のレールの上をのんびり走る、いつまでも乗っていたかったミニトレイン。夢を覗ける望遠鏡。そして、乗る度にあっという間に終了してしまう、博多をその手中に納める快感運ぶ観覧車。屋上のささやかな遊園地の思い出は、つつけば今もこぼれ落ちて来ます☆

欲しくても欲しくても買ってもらえなかった、回転する胸元が開き機関銃を撃ち放つ、大きな真っ赤な顔の四角いロボット。そんな彼らが売り場の入口に鎮座するオモチャの国。
貯金箱を崩し、母親の誕生日のプレゼント用に手動鉛筆削りを、胸ワクで買い求めた文房具売り場。
爪楊枝国旗輝くお子さまランチや人生初の焼きプリンを食べた六階食堂。
幼い私にとってこれ以上のアミューズメントパークは想像出来ませんでした。

その日も浮かれ気分でドアをくぐり、エスカレーターに乗ろうとする私の顔を見た母親の表情が曇りました。「なんね〜!あんたの顔は〜!汚ればいっぱい付けてから情けなかねー!」と言って自分のハンカチを取り出して、唾液を付け私の顔を台所掃除のようにゴシゴシ拭き始めました。顔をぐにゃぐにゃにされて少し痛かったのですが、終わった後の爽快感は、今や当たり前文化のアルコールティシュ等ではとてもかなわない、忘れ難いさっぱり感と母の安堵の笑顔☆今でもこのシーンがこの時期になると時折蘇ります☆


090424

2009.04.24

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