Martintonの日々

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コントラバスの渡辺さん

受験のシーズンですね〜。
何方でも何かしら記憶の結晶を保管されていると思いますし、只今次世代の現場真っ只中と云う方もおられるでしょう。

何を隠そう、僕の人生のなかで真剣に机に向かった時期は、恥ずかしながら後にも先にも高校二年の時だけだったのです。
不器用に一心不乱に没入出来たあの頃に、頭の中ではタイムスリップが可能なほど鮮明画像にて浮遊できます。

そしてそれと共に大切な一人の家庭教師の男性の存在が浮かんで来るのです。
彼は当時九州大学在学中の学生であり、九州交響楽団のコントラバス奏者でもありました。何かと面倒に違いないはずの、僕の学校外フォローを、嫌がらず買って出てくれたのです。
僕のお袋と彼のおかあさん(化粧品店の名物ママさんで素敵な方でした。)が友達同士だったと云う縁も味方に、成立した話のようです。
彼独特の短時間集中指導プラス音楽用法が僕のやる気を上手く持続増幅させてくれました☆

事の始まりは、ある大学への推薦入学の相談を、ダメ元で担任の先生に漏らした時の、恩師の一言が引き金でした!
「あの大学への推薦をもらおうなんて考えを持っとうとやったら、二年生のうちに相当頑張らな〜!大変かも知れんが、先ずは学年で一桁の中に入る成績ば1・2回は残さなー 始まらんばい〜」

僕のその頃の成績はとても人様の前に公表出来るものではありませんでした。ハードルはかなり高く、見上げる気持ちが萎えてしまいそうでした。しかし何故だか珍しく定まった目標に(ここは好きな音楽をやるのに適した大学)邁進する気持ちが不思議に溢れていました。

さてさて!始めに何から手を付ければいいのか?と云う程、全てがイケていない状態。
とりあえず、まずは一番の弱点である見えない黒板をどう克服するかが問題でした。
最前列中央、教壇まん前の席でも殆ど対処出来ない僕の淡い眼力★小学校時代から先生の教えの源の黒板には頼れず、ひたすら教科書とヒアリングにて乗り切って??来ました!(のちに進学と共に段々小型化して行く教科書の文字にも悩まされましたが)

「よ〜し!とりあえず教師が書き残す黒板の文字を確実にノートに書き写す作業から」、と云うわけで家の中にあった娯楽用双眼鏡の導入でした。
とても幸いな事に周りはむさい男子ばかりの高校、なりふり構わぬ授業姿勢も、勢い気合い勝ちでした。最前列で大きな双眼鏡を左手に右手はペンでの驀進の時が訪れました!

黒板両サイドの光に反射して見えづらい部分は、出来の良いクラスメートのノートを休み時間に借りて、写し踏ん張り。1日1日が過去味わった事のない密度濃い日々でした。
変態な授業姿勢の噂を聞きつけ、隣近所のクラスの生徒がよく覗き見に来ていましたが、幼い頃からいろんな場面で奇異な目で見られる事も多く経験済み!殆ど気になりませんでした。

しかし小・中・高校と、まともに授業を吸収して来た訳ではない中身空しい知恵の袋、学校内環境を整えても追いつかない、基礎学力の底上げと云う大きな難題が横たわっていました。そこで登場したのがユニークな家庭教師のワタナベさんでした。

僕の部屋へ彼が入って来るといつも上品ないい香りがしていました。
彼が定めた?勉強時間の割り振りがイカしていました。始まりの3・40分は当日の克服課題に対して徹底集中して教えてくれますが、何かしら目標のゲートをクリアーすると、すかさず彼は持ち込んで来たクラシックレコードに針を落とします。

部屋を音で満たし、しばらく鑑賞の時間が訪れるのです☆当然クラシックの楽曲は長目です。あっと云う間に前半の勉強時間が終わりを告げます。そしてレコード針を上げた後のタイミングで、いつもお袋がお茶とお菓子を運び休憩時間となりました。

後半戦はほんの少し勉強に時間を割いて、あとはその日流した楽曲の素晴らしさを解説♪互いの音楽談義時間となり、そのままフルタイムとなっていました。時には僕がビートルズのレコードを出して来て、彼をポピュラー音楽側にイザなった事もあります。見事にそれはそれで成果を上げました♪

こんな具合ですから週3、4の学習日もさして苦にもならず、かといって成績には確実に反映される事となり☆何だか想い描いていた目標に、知らずうちに到達をしていました。幸せな事に♪

リムスキー・コルサコフの[シェラザード]を聴きながらワタナベさんがコントラバスのビブラートの難しさを説いている左手の指先を思い出します☆


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2009.01.31

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