Message From Masatoshi Ueda


◆Masatoshi Ueda Solo Live 〜Hello, my dear〜◆



幼い頃から"歌"が大好きでした。
特に小学校の音楽の時間に"歌"を歌うことが大好きでした。
日本の音楽を小さい頃から聞いていて好きだった時代は確かにあったはずですが、僕が思春期を迎えるちょっと前あたりから日本の音楽は停滞しはじめたように思います。
戦前戦後、洋楽に影響を受けたクラシックやジャズ・ミュージシャンの人達が日本の音楽を何とかしようと頑張って、その時代に生まれた名曲はいっぱいありました。でも僕が思春期を迎える頃には日本の音楽はつまらないものに変わってしまいました。

その時に登場したのが、ビートルズです。
その頃はまだ僕は聞き手でした。
そしてGSの登場です。当然ビートルズの音を、その水準をコピーではなく日本語流に変換してくれるだろうと期待しましたが、その前の停滞した音楽に単なるビートルズの演奏・楽器形態を真似ただけのものでした。
これは自分で演るしかないな、との思いもよぎりましたが、あるのは感性だけでした。

私の思いに応えるかのように必然として、チューリップというバンドが夢をかなえるために登場しました。
その中心に財津和夫が居た訳です。
はっきり言ってチューリップは日本の音楽史上、新しい扉を開いたと僕は思います。サウンドに日本語が乗っかっていても僕はチューリップは“洋楽”だと思っています。
僕はチューリップに参加して"歌"がやりたかったんです。
"歌"が歌いたいというよりも、ビートルズに感じた"歌"を表現したかったんです。その方法論としてドラムを選んだ、ということです。
ドラムを演りつつ楽曲を演るということによって自分の欲求はある程度満たされたと思います。

そうして今考えてみると、それなりの達成感は得られたけれども"自分の歌"を表現する、という意味ではまだ引っかかるものがあって、チューリップを辞めたんだと思います。
そして新しい自分のバンドを作りました。
まだその頃は自分の手中に作曲というものがなかったので「こういう曲のイメージで」といったある種プロデュース的な方法でバンドを作って自分の欲求(夢)を満たそうとしましたが、なかなか形にはなりませんでした。

時は過ぎて何故今回、ソロ・ライヴをやるのかというと、日本のミュージシャンのうちの大多数がJ-POPを聴いてJ-POPスターになったという人がほとんどで、中には洋楽を聴いている人もいるけれどもポピュラーミュージックといった意味ではJ-POPはまだまだ世界に追いついていないし、演奏能力の高い人はいるけれど、日本語にリズムをはべらせたロックだったり、実はロックの張りぼてをまとった演歌だったりと、ため息がこぼれてきます。
もちろんJ-POPの中にも素敵だなと思う人、素晴らしい人もいますが、全体を通じて向かっている方向が間違っているのではないかなと僕は思います。

ある時"自分の歌"というものに着目し始めました。
"歌"が好きで始めたのが"ドラム"であって、
"ドラム"が好きで"歌"を始めたのではない、ということを。
そこに立ち戻ってみようと思いました。
今のJ-POPと対決するつもりはないけれど、自分の中にあるものを、"音"を、"歌"を、自分の中にある方法で少しづつ表現出来ればいいなと思いました。
それはアルバム『Gratitude』を出した時に感じましたがそれは単なる出発点で、その後、続々と自分の中にある"音"が出てくるようになって表現しなければいけないかな、と思いが増してきました。

音楽をやり始めた時の第一歩を、ドラマーである以前に音楽人としての上田雅利の第一歩を、表現したいと思います。もちろんドラムは叩きますが音楽をやる上田雅利に立ち戻ろうと。
ドラムを叩くという以前に"歌"というものに、ビートルズから始まる洋楽全般に魅了された自分に立ち戻って、一番最初に受けた衝撃、これを日本語に出来ないかとその時に思った気持ちをもう一度思い起こさせてくれるようになりました。
そのきっかけは友達のライヴをいくつか観たということです。全部オリジナル曲で日本語で歌っていました。その人達はそれぞれJ-POPではなく洋楽をちゃんとやっていました。
洋楽が偉いということではなくて、せっかく新しい扉を開いた僕達であれば、ちゃんとした形で自分の中の"音"を表現しなければいけないんだ、僕もそうなんだ、ということに気づきました。

だから"歌"をもう一回やってみようと、真剣に自分が好きだった、ショックを受けた、インスパイアされた、自分の中に内在しているものを形にするという最も大きな武器が"歌"だと思うので、その"歌"を中心に自分のソロ・ライヴをやりたいと思いました。

固いことを色々言いましたが、
基本は自分の中にある「音を楽しみに換える」という作業をやりたいです。
仲間達が集まってきてくれて一緒に演ってくれることが楽しみで仕方ありません。でもやることの重みも充分感じています。ちゃんと表現出来ればいいな、と思います。ちゃんと出来なければ口ほどにもない自分にがっかりすることだろうと思います。

・・・10代に夢見ていた自分に立ち戻りたい、というのが今回の主旨です。

2004.09.01
上田雅利


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