Martintonの日々

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三度テツ(愛犬)話『トルネード』

彼が鎖から解き放された時の喜びは身体全体を使います♪
鎖が首輪から離れる「カチン」と云う音が合図です!
先ずは歓喜溢れる雄叫びを発しその場を数回転!あの有名な童話の中でチーズになってしまった虎のように、そしてその回転を維持しつつ前進するのです。まるで竜巻犬です♪
かまぼこ屋さんの通路にキチンと並んでいた職人さん達の長靴や僕らの靴や、ぶら下げられた沢山の雨傘をトルネードして行くのです。若い時期の元気のバロメーターでもありました。彼が通り過ぎた後の通路の片づけは毎度悩みの種でした!

まだ成犬となるまでは、放つ前によ〜く耳元で「走らんとよ〜走らん!と」とささやき、手の平で頭を撫でると大人しくなっていましたが。大きな体を有し、強いアドレナリンに支配された時期の彼に聞き分けなどありませんでした。
1日1度の解放をスムーズに行う為に毎度「テツを放すよ〜」の私の声に、大人達が長靴や傘のガードに身体を張っていた光景♪今も微笑ましい絵柄で残っています。
日に何度かは彼の塒(ねぐら)に対話?に行くのに、僕がその目的の為に近づくと彼は直ぐに察知するのです♪スックと立ち上がり竜巻犬への変身準備に取りかかります!全身の血流に鋼(はがね)の気合を乗せたかのように。

しかしいつの日か、この変身準備にも次第にあぐらをかくようになります。明かな気配を持って僕が近づいても鎖が首輪から離れる「カチン」を聞かないかぎり、悠然と私はトルネードなんて起こしません的な顔を嗜(たしな)むようになって来たのです。生意気にも!
だったらこちらもその彼の裏を欠くべく楽しみを挟んで♪わざと「カチン」と音だけ作って実際には鎖は首輪に付けたままを試してあげました。願い通りいつものように鎖を解かれと思い込んだテツ♪全身鋼を纏い♪思いっきり回転を付けようとした瞬間に己を引き止める鎖の存在に気付くのです!瞬時にしょんぼりから悠然へとまるで何事も無かったかのように元に戻る仕草は一級品でした☆
解放を満喫すると程良い時間には必ず塒には戻っていました。その意味では手間のかからない犬でした。たまに彼女が出来食事抜きでデートに勤しむ時期もありましたが♪

しかし番犬としての力量は先代の『名犬エス』とは大分異なり判定しづらいモノがありした。侵入者に対して何故か得意の勘が機能する事も無く、ひたすら見境無く吠えまくるのです!マァ〜要は少し臆病犬君だった訳です♪
そう!こんな事がありました。
彼がネズミと初対峙した折、素早く四隅に追い込みはしましたが即襲う事をせず、様子見で顔をネズミにそっと近付けたのです。その瞬間カリカリと鼻先をかじられ、微かな出血と共に即退却★それ以来ネズミの往来には目もくれなくなってしまいました♪

そんな彼との長い付き合いの中で僕は2度程テツに噛まれた事があります!
1度目は彼が横たわっているのに気付かず彼の尾っぽを思い切り踏みつけてしまった時です。一瞬野生の血流に任せ「ガブリ」とふくらはぎをやられました!気付けなかったこちらの落ち度を棚に上げ、滴る傷口を彼の鼻先へ近づけ「これは誰が噛んだとね〜」と攻め立てると、申し訳なさそうな表情を浮かべ目をしばしばさせて傷口をペロリ。後はひたすらデカい図体を丸〜く小さく折りたたんで後ろ足に顔を埋め隠し、瞳だけ僕に向けて悲しそうに謝りの視線を送っていました☆
しかし再度、僕が誤って前足を軽く踏んづけた時の対応も同じでした♪
全く容赦のない「ガブリ」の一撃を貰いました!ひょっとして実は2度とも野生を都合よく織り交ぜての巧みな対応だったりすると話の弾みも大きくなるのですが、それ程の器量には届かない「アッやっちゃった〜」的なところが彼の可愛さを増すポイントだったりする訳です☆


0618

2008.06.18

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