Martintonの日々

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父の小さな挫折。

めったに車の通らない広い道に出逢うとよく思い出し思う事があります。「こんな所で自由に乗ってみたかったんだろうな〜」と。

何処に行くにもスクーターだったリーチ君(父)が一度だけ思いつき?で車の運転に挑戦した事があります。
「マーチントン行くぞ!」と僕を従え向かった乗り物はスクーターではなく蒲鉾配達用のライトバンでした。
リーチ君には二輪の免許しかなく、いつの日か四輪を!との思いをこっそり試してみたくなった出来心?からでしょうか?
ひょっとして以前何処かで免許を持つ従業員と入れ代わり、少し運転をさせてもらって自信を抱いていたのかも?
勿論いずれにせよ無免許でのイケない挑戦ではありました。
がしかし蒲鉾店の車庫の両脇は壁まで15センチずつ程の隙間しかなく、初心者の車庫出しにはかなりの難関だったはずです。
何故に僕を誘ったのかは疑問ですが、多少の勝算を持ち合わせての事とも思います。

蒲鉾店の定休日、まだ暖かさが嬉しい初夏の昼下がりでした。
僕を助手席ではなく後部座席に座らせての消極性が見え隠れのトライアルでした。
キーを差し込みエンジンをかけサイドブレーキ♪彼の緊張を背中に感じつつ、僕にとってはスクーターとは別の、リーチ君との新たな世界への扉の前での儀式の始まりでした。 少しずつ前進、そして後退の繰り返し。
両脇の壁との戦いが何度か繰り返され、一度は頭の部分が微かに横丁に出かかりましたが、壁をこすりそうになり再び後退★
結局20分以上の苦戦が続き、遂には大きな溜め息を境に、ギブアップな終了でした。
挫折君は僕を後部座席にひとり残し、静かにドアを開け立ち去りました。
何故か残された僕にも挫折感が襲って来たのを覚えています。
今思うに、あの普段の父らしからぬ向こう見ずは何だったんだろう?と考えます。
もし車庫出しを成功させたとして、横丁を走り近所を無事一周したとしても、車庫出しより面倒な車庫入れをどうクリアーする気だったのか、それとも以前車庫入れの経験練習がなされていて、車庫出しを甘くみていたのか?多くの疑問が残ります。
その後リーチ君がその話題に、四輪のハンドルに触れる事はありませんでした。
ふたつの胸にしまい込んでいたはずの、リーチ君の小さな挫折♪の記憶です。『ごめんね!』

でも、どうして教習所へは行こうとはしなったのかなあ〜?
今度もし夢で会えたら(全然ご無沙汰♪)天国のリーチ君に聞いてみるつもりです。

あと三つ寝ると♪
『スクーターワルツ』表参道FABです。


0414

2010.04.14

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